こんにちは。
白髪老師のサバ男です。
外国人に日本語を教えています。
日本語を学ぶ外国人の人は、日本語学校で300時間くらい勉強すると日常会話はほぼ話せるようになります。
これは、日本の中学生が3年間で学ぶ英語の授業と同じくらいの時間です。
意外に少ないな、と思いませんか?
これを可能にしているのは会話中心のレッスンに特化しているからです。
とすれば、日本人の多くが苦手にしている英語学習方法も、日本語レッスンを応用した会話中心の内容なら、もっと効果的に進めることができるはずです。
日本語レッスンは、導入→練習→定着の確認という順番で進めていきます。
くわしくはこちらをご覧ください→日本語を学ぶ外国人がスムーズに話せるようになる理由
ここでは日本語レッスンの具体的な内容を紹介して、英語学習への活かし方を書いていきますね。
外国人の日本語レッスンは「導入→練習→定着の確認」のくり返し
日本語レッスンと一口に言っても、レベルによって進め方が違います。
学習者の習熟度や目的の相違によるからですが、入門~初級レベルであれば概ね進め方は決まっています。
導入・練習・定着の確認です。
どんなレッスン内容なのか、比較の表現(~より~のほうが~だ)を使って具体的に見てみましょう。
導入
導入は、語彙や文型など新しい内容を扱う際に学習者にイメージしてもらう活動のことです。
誰にでも理解できる状況を作って、そこで使われる語彙や文型を示していきます。
使用するのは実物や写真、絵カードです。
ここでは日本のカレーとタイのカレーに、赤唐辛子をつけて辛さを表現した写真を使います。
「日本のカレーです。」といって写真を指差し、食べる仕草をした後に、おいしそうな表情をみせます。
それから、「タイのカレーです。」といって同じような動作をしたあと、辛そうな表情をみせて、「からいです。」と言います。
赤唐辛子のイラストが辛さのレベルを表すのは大体わかりますから、これで「辛い」の意味が理解できます。
そのあとで、二つの写真を指差しながら、
「日本のカレーよりタイのカレーのほうがからいです。」と言います。
そして、この文をホワイトボードに書いて、生徒さんたちに言ってもらって、ひとつ目の導入は完了。
もうひとつ、別の「遠い」「高い」などの形容詞を使って説明します。
「名古屋より大阪のほうが遠いです。」
「東京タワーより東京スカイツリーのほうが高いです。」とかですね。
実際にはちょっと文が長いので、最初は「~のほうが」だけを教えることが多いです。
それから「~より」を追加する形です。
大体導入は二つか三つ行います。
導入は新規の表現を理解するのが目的です。
こういう言い方で表現するのだな、というのがわかってもらえたらとりあえずOKです。
練習
言い方を理解できたとしても、それだけでは使えません。
日本とタイのカレーの写真をみたら、すぐに「(日本のカレーより)タイのカレーのほうがからいです。」が言えるようにならないと使えることにはなりません。
そのためには練習するしかありません。
練習はいくつか方法がありますが、ここではリピート練習と代入練習を行います。
リピート練習は、教師がお手本を示し、その通りに言ってもらうこと。
教師:タイのカレーのほうがからいです。
生徒:タイのカレーのほうがからいです。
教師:日本のカレーよりタイのカレーのほうがからいです。
生徒:日本のカレーよりタイのカレーのほうがからいです。
・・・
リピート練習で概ね口が回るようになったら代入練習です。
代入練習は元となる文でつかった単語を別の言葉で置き換える練習です。
教師:大阪・遠い。
生徒:大阪のほうが遠いです。
教師:東京スカイツリー・高い
生徒:東京スカイツリーのほうが高いです。
・・・
教師が言ってからすぐに帰ってくるようになったらこの表現はいったん終了。
つぎに疑問文や否定文も、同じように導入や練習を繰り返していきます。
定着の確認
練習が終わったら、その表現を使う状況を想定して話してもらいます。
これが定着の確認です。
レストランでの注文を想定しますので、レストランのメニューを使います。
教師が店員と客の二役でモデル会話を示します。
客:(メニューをみて)すみません。
店員:はい。
客:どちらがからいですか?
店員:これのほうがからいです。
客:じゃ、これお願いします。
店員:はい。
このやりとりをホワイトボードに書いて、二人ペアになって話してもらいます。
レストランであれば、「甘い」「多い」などを使います。
旅行代理店などでは、「(値段が)高い」「早い」などですね。
初歩的な内容ですが、実際の状況をイメージして練習した内容がすぐに口に出せるかどうかを確認します。
簡単そうですが本当に定着していないと、数をこなしているうちに混乱する人もでてきます。
こうなるのは、練習が足りていない場合が多いです。
グループレッスンの場合は難しいですが、定着が不十分な人には再度練習をしてもらいます。
考えなくてもすぐに口から出るくらいでないと、会話になりませんから。
実際には、学習した項目を単独で行うことはあまりなく、テキストの該当する課で学習した項目を組み合わせて行うことが多いです。
たとえば、げんきというテキストでは、比較は10課で学習します。
出典:Genki – 「会話・文法編」学習項目一覧 (japantimes.co.jp)
10課では他に「~つもりです」「~でいきます」などの表現を学びます。
これらを使って旅行代理店で旅行の予約をするロールプレイを行います。
客:夏休みに北海道に行くつもりです。札幌と函館とどちらがいいですか?
代理店:ラーメンとすしとどちらが好きですか?
客:すしのほうが好きです。
代理店:函館のほうがいいと思います。すしがおいしいですから。
客:どうやって行きますか?
代理店:飛行機と新幹線があります。新幹線のほうが安いです。でも、飛行機のほうが早いです。
客:じゃあ、飛行機にします。
こんな感じですね。
それなりに会話になっていることがわかると思います。
このように文型の知識を得て、練習して身につけ、さらにそれにふさわしい状況で口に出してこそ、その表現がわかったと言えることになります。
日本人の英語学習方法も外国人の日本語レッスンと同じです
それでは日本人が英語を学ぶ時はどうすればいいでしょうか。
実際問題として、英語は義務教育期間中に学びます。
良くも悪くも中学校の英語が出発点になります。
「英語は5文型ですよね!」
「現在完了形は、継続・経験・完了の表現です!」
「受動態はbe動詞+過去分詞で表現します!」
というような知識は、ほとんどの人はもっています。
では、どんな風に英語で話すのでしょうか。
ほとんどの人が、まず日本語の文を思い浮かべ、それを英語にするのではないでしょうか。
よくある飛行機の機内食での笑い話。
Would you like fish or chicken?
I am chicken.
という会話になってしまうことがあります。
Chicken please.と言えば済む話を、「私はチキンにします。」という日本語から英語に変換してしまうのでしょう。
また、現在完了形は中学2年で学ぶ項目。
「あなたはどのくらいそこに住んでいるのですか?」
を英語では現在完了形を使ってこんな文で表現します。
How long have you lived there?
ところが「住んでいる」を現在進行形と混同して、
How long are you living there?
としてしまうミスもありますね。
日本語に引っ張られてしまうわけです。
過去のある時点で始まった事がらが、現在とつながっていることを示すのが現在完了形。
頭の中で一本の時間軸の線が引かれ、ある時点から現在までつながっていくイメージでしょうか。
そのイメージから使うべき英語の表現をリンクさせて、英文を作る必要があります。
日本語で考えるのではなく、「英語で考えましょう」というのは、まさにこのことです。
そうは言っても、簡単ではありません。
私たちは子どものころから、日本語で考えるくせがついてしまっています。
無意識のうちに、頭の中で日本語の文が出来上がってしまうのです。
もう一つだけ例を出します。
朝ごはんにプレート2人前、さらにスープを一皿、デザートにフルーツとヨーグルトを食べたとします。
日本語では、
「朝ごはんをたくさん食べました。」
英語では、
I had a big breakfast.
と表現します。
日本語では食べるという行為に視点を置くのに対して、英語ではテーブルにある大量の食べ物がイメージされます。
同じ光景を見ていても、表現方法が違ってくるわけです。
これを乗り越えないと、英語が話せるようにはなりません。
そのためには考える間もなく、すぐに頭で感じるくらいにならないといけません。
考えるな、感じろ。
というわけです。
その方法はさんざん書いてきました。
導入・練習・定着の確認
これの繰り返しあるのみです。
そのためには教材を使うのが有効です。
英語学習用の教材は無数と言っていいほどあります。
その教材をやみくもにやるのではなく、導入・練習・定着の確認を意識して進めるのが効果的です。
海外旅行であればホテルやレストランで会話をすることになります。
海外旅行向けの英会話本であればモデル会話は必ず掲載されていますが、その内容を丸暗記だけではあまり意味がありません。
モデル会話は導入部分にすぎないからです。
実際に起こる状況をイメージし、モデル会話の内容を自分でアレンジして練習を積み重ねて初めて身につきます。
例えば、
Do you have a twin room available for tonight?
という例文の、twin roomをsingle room、tonightをthree nights に変えてみるとかです。
あとはロールプレイができるような教材を使って、実際の状況でもスムーズに口からでれば定着したといえるでしょう。
このあたりは教材によって特徴がありますから、どれか一つだけでやるのではなく、導入で使うか練習で使うかなど、組み合わせを意識して選択するといいでしょう。
状況の紹介などの説明が多いから導入で使おうとか、練習問題が多いから練習用だな、とかです。
一度決めたら、とにもかくにも何度も繰り返し練習することです。
頭に浮かんだ情景がそのまま英語になって出てくるまでですよ。
まとめ
英語の学習方法というと、単語や熟語、文法表現などを覚えることを思い浮かべます。
英語のテストならそれでもいいのですが、会話となると相手とのコミュニケーションですからそれだけでは足りません。
もちろん語彙力がないと相手の話はわかりませんし、文を組み立てるルールがわからないとこちらの意思をつたえることはできません。
しかしながら、目の前の状況にふさわしい表現を自在に使えて、初めてコミュニケーションが成り立ちます。
そのためには、導入→練習→定着の確認を繰り返すのが結局は近道なのです。
コメント