こんにちは。
白髪老師のサバ男です。
外国人に日本語を教えています。
2021年の秋から放送されたNHK朝ドラの「カムカムエヴリバディ」。
ラジオ英語講座と3世代にわたるヒロインの物語で、ドラマ自体は高い評価を受けていました。
それだけにNHKとしては、英語講座のブームを期待したところでしょうが、残念ながら大人気とまではなっていないようです。
NHKの英語講座はいくつもの番組があるので、どれを選べばいいのかわからないというのもあるかもしれません。
NHKの英語講座自体はとてもよくできています。
勉強方法次第で英語の実力は上がることは間違いありません。
NHKの受信料についてはいろいろ論争がありますが、払っているからには利用しないと損です。
ただ、2022年度ではTVの英語講座はごくわずか。
英語だけではなく、語学番組全般に言えることです。
特にヨーロッパ系の言語は旅行に使えることを目的にしています。
「語学講座」という性格の番組ではラジオにシフトしていますね。
NHK出版の「英語学習ガイド」によると、2022年度のNHKの英語講座の番組はラジオが10番組・テレビが4番組で、他にムック本として2講座設定されています。
タイトルから一応はどんな内容かはわかりますが、どのように勉強するべきかは人それぞれ。
一方的に流れてくる電波を見たり聞いたりするだけなので、番組が終わるとわかったような気分になってしまう人が多いことでしょう。
これが危険。
英語は義務教育でも必須課程なので、すべてのひとが勉強します。
NHKのテキストみても、なんとなくわかってしまいます。
ただ、わかることと使いこなせることは別問題。
スポーツのルールは知っていても、全員が上手なわけではありません。
同じように、正しい方法でトレーニングを積んでこそ英語が話せるようになります。
日本語を学ぶ外国人の条件は、英語の比ではありません。
日本語は日本国内でしか使われないマイナー言語です。
学習用の教材も、世界中で売られている英語教材とは比べ物になりません。
そんな中でも、日本語を学ぶ人たちは着実に日本語が話せるようになっています。
理由は正しいトレーニングをおこなっているから。
日本語教育は、しっかりした外国語習得理論に基づいて行われています。
日本語レッスンで学んだ人が日本語の壁を易々と乗り越えているのは、私からすると不思議でもなんでもありません。
そこで日本語教師の私が、最も身近な英語教材であるNHKの英語講座を使って効果がある勉強法をお知らせしましょう。
NHKの英語講座はラジオが中心
英語を勉強する方法で一番安価なのはNHKの講座番組の視聴が一番。
これは今も昔も変わっていません。
4月になると、NHK英語番組活用法などが雑誌に特集されます。
最近ではNHKの番組もラジオにシフトしているので、ラジオ講座の紹介がほとんど。
思うに、TVではどうしてもタレントさんなどを起用しなければならないので、コスパがよくないのかもしれません。
今後もこの傾向は続くでしょう。
ここでも、ラジオ講座を対象にしたいと思います。
2022年度のNHKラジオ英語講座の内容
2022年度のラジオ英語講座は全部で9つ(単語学習用のボキャブライダーを除く)。
いずれもCEFRに準拠しています。
・中学生の基礎英語レベル1
・中学生の基礎英語レベル2
・中高生の基礎英語 in English
・ラジオ英会話
・英会話タイムトライアル
・エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
・ラジオビジネス英会話
・ニュースで学ぶ「現代英語」
CEFRについてはこちらの記事をご覧ください。
CEFR(セファール)は外国語学習の道しるべ
上記のうち、「小学生の基礎英語」は英語に初めて触れる小学生向けの内容。
さすがにこの番組は文字通り小学生向けと言っていいでしょう。
なので、中学生の基礎英語レベル1からがターゲットになります。
CEFRに準拠した語学番組
NHKが設定した各番組のCEFRは以下の通り。
中学生の基礎英語レベル2 A1~A2
中高生の基礎英語 in English A2~B1
ラジオ英会話 B1
英会話タイムトライアル A2~B1
エンジョイ・シンプル・イングリッシュ A2~B1
ラジオビジネス英会話 B1~C1
ニュースで学ぶ「現代英語」 B2
かつては細かい文法解説などがありましたが、CEFR準拠になってからはコミュニケーション能力の向上が重視されるようになっています。
実はこの辺りは、最近の外国語習得理論の中心的な動き。
外国人向けの日本語教育も同様です。
現在の日本語教育のレッスン方法はこちらの記事をご覧ください。
日本人の英語の学習には外国人の日本語レッスンが参考になります
NHK英語講座のおすすめ勉強法
これから順に2022年度のNHK英語講座の勉強法を考えていきます。
中学生の基礎英語レベル1・2
私の年代では基礎英語と続基礎英語といったほうがわかりやすいかもしれません。
中学校1,2年生で学習するレベルの英語です。
初めて本格的に英語に触れる中学生はもちろんですが、入門レベルから英語を復習したい人にはうってつけの番組です。
とにかく丁寧に初歩から説明してくれます。
学校でなんとなく理解していた内容も、改めて勉強すると理解が深まるでしょう。
ただ、説明が主なので練習時間があまりありません。
理解したら定着するまで繰り返し練習する必要がありますが、テキストにはそれほど問題数が掲載されていません。
日本語教育で言うと、導入部分がほとんどで、練習に該当する部分はほんのわずか。
ですから、スキットの文章を丸ごと覚えてしまうのがおすすめの勉強方法です。
放送ではその日のキーセンテンスがありますが、これだけ覚えても使えるようにはなりません。
どの状況で使われるのかを把握しておく必要があります。
スキットは会話の流れですから、この状況ではこの反応がいいのだと理解できます。
問題数が少ない分、会話文の暗記でカバーしましょう。
まったくの初心者はテキストを買った方がいいですが、放送される会話文を書きとるディクテーションを行い、それを覚えるのもいいでしょうね。
おすすめの人:英語初心者の人・初歩から復習したい人
おすすめの勉強法:会話文を丸覚えする
中高生の基礎英語 in English
中高生の基礎英語 in English|おうちで英語学習|NHKゴガク
全編英語で放送されるユニークな番組構成。
基礎英語レベル1・2で学んだ文法をどう運用レベルまでもっていくかに重点を置いているためか、使われる表現に難しいものはあまりありません。
一つのテーマを1週間かけて、語彙の説明からアウトプットの練習までを行います。
日本語で日本語を教える日本語教育と進め方は同じです。
10代の生徒役の人が、すべて英語でのレッスンを受講する形。
容赦なく英語で質問を浴びせかけられ、四苦八苦しながら英語で返しています。
リスナーからすると、プライベートレッスンを見学しているような感じです。
この番組は生徒役が質問攻めにあいますから、生徒役を自分に置き換えて聞いてみましょう。
この番組のおすすめの勉強方法は、実際に自分ならどうこたえるか考えながら聞いてみることです。
わざとかどうかわかりませんが、生徒役の人はよく間違えます。
それを講師の人が訂正してくれます。
自分も同じミスをしていないか、どんな表現が自然なのかチェックしてみましょう。
講師の人は同じ表現を何度も繰り返してくれますから、自分が受講している気分で聞いていると自然に覚えていくはずです。
ポーズがかけられるので、後日放送されるストリーミング放送で聞くのがいいでしょう。
おすすめの人:中学レベルの文法はマスターしていても会話に自信がない人
おすすめの勉強法:生徒役になりきってこたえを自分で考えてみる
ラジオ英会話
名前こそ時代と共に変わっていますが、戦前から続く歴史あるNHKの看板番組の一つ。
NHKが語学番組で一番力を入れている番組ではないでしょうか。
現在の講師は大西泰斗先生。
2021年の下期からはTVでの番組も持っていますね。
SVOやSVCといった学校の英文法の用語はあまり使われません。
それよりもイメージで英文を理解しようとするスタンス。
正直、かなりユニークな方法です。
日本語教育で、少なくともイメージで日本語を理解しようというのは聞いたことがありません。
基本的に日本語教育は、日本語で日本語を教える直接法が中心です。
これに対してラジオ英会話の場合は、学習対象の英単語がもつイメージを日本語で丁寧に解説していきます。
例えばtakeを英和辞典で調べるといろんな日本語訳がでてきます。
ただ、英語話者の人にとってはtakeという一つの言葉でしかありません。
takeの持つ核のイメージがあって、それから意味がふくらんでいく。
このイメージを理解してもらおうというのが番組の目的です。
番組では解説した言葉を使った例文をいくつか説明して理解を深めていきます。
最後に英文を作ってもらうタスクがあります。
理解というゴールは同じでも、現在の主流である文の構造に言葉をあてはめていくやり方とはちょっと違いますね。
イメージだけで話せるとはちょっと思えませんが、単なる暗記よりは理解度が深くなるのは間違いないところ。
いわば急がば回れというところでしょうか。
おすすめの勉強方法は、番組で得た知識をもとに多聴多読に挑戦することです。
英文の字幕付きで洋画や海外ドラマを見るのもいいでしょうね。
言葉のもつ意味が理解できていたら、より深く文章全体の理解もしやすくなっているはずですから。
おすすめの人:中学生の基礎英語レベル1・2レベルをマスターした人
おすすめの勉強法:番組と並行して多聴多読に挑戦する
エンジョイ・シンプル・イングリッシュ
エンジョイ・シンプル・イングリッシュ NHKラジオ らじる★らじる
放送時間5分のミニ番組。
オリジナルのショートストーリーや偉人伝などの、500語程度の英文だけで構成されたストーリーが音声で流れます。
一応ナビゲーターの人はいますが、解説などの説明はありません。
日本語に訳さずに、英語を英語のまま内容を理解するのが目的。
当然、まったくの初心者では難しいです。
中学校の英語を学習し終わるくらいの英語力が必要です。
テキストに掲載されているおすすめの学習法は、
テキストを読んで内容を把握→放送を聞く→もう一度テキストを読み返す
というもの。
多くの英文だけを「聞く読む」を繰り返す、多聴多読という英語学習法ですね。
つまりインプットに特化した内容です。
「こういう状況ではこういう表現をする」というのを理解していくことになります。
私のおすすめの学習法は上記の学習法に加えて、放送を聞くときにシャドーイングをすることです。
シャドーイングとは、文字をみないで耳から入ってきた音声を1~2秒程度遅れてそのま
ま口から発声する練習法のこと。
日本語教育でも、口が回らない学習者によくやってもらいます。
テキストを一度読んでいるので、どんな内容かはわかっているはずです。
聞いた音声をそのまま口に出して繰り返していくことで、単に聞くだけよりも頭に残りやすくなります。
何か月か繰り返すことで、アウトプットもかなりこなれてくるはずです。
おすすめの人:中学レベルの英語の学習が終わった人
おすすめの勉強法:放送時の音声にあわせたシャドーイング
英会話タイムトライアル
この番組は英語を学ぶというスタイルではありません。
日本語をベースに、英語で発話する瞬発力を養うトレーニングになります。
日本語でお題がだされ、それを間髪入れずに英文で返す。
野球やテニスの練習では素振りを繰り返して体にフォームを覚えさせますが、まさにその英作文版。
簡単な表現を繰り返すことで英会話初心者にありがちな、口から英語がすぐにでてこないという事象の解消を目指します。
使われる表現はそのまま覚えなければいけないレベルなので、あまり難しいものではありません。
これらを覚えたあとに、実際に使われる状況をもとにロールプレイのような練習が行われます。
放送時間は1日10分ですが、かなり内容は濃いものになっています。
おすすめの学習方法は、事前にテキストで予習して完璧でなくても使われる英文を覚えておくことです。
放送で日本語の指示が出されたらすぐに口から出るよう準備しておくことで、学習効果があがります。
1年間継続することで、かなりスムーズに英語が口からでてくると思います。
おすすめの人:英語がなかなか口からでてこない人
おすすめの勉強法:放送前にテキストで英文を予習して、覚えておく
ラジオビジネス英語
番組名の通り、ビジネスで英語を使う人向けの番組。
「ビジネス英会話」「ビジネスメール」「インタビュー」という構成。
ビジネスで使う表現を学習するわけですから、当然基礎的な内容は習得しているものという前提で話は進みます。
内容はある状況が設定されて、そこでどんな表現を使うのが望ましいのかの学習していきます。
ビジネスの表現ですから相手がわかればいいというものではなく、誤解なくお互いの意思疎通をはからなければならず、TPOに応じた表現が求められます。
このあたりを番組では詳しく解説してくれます。
ただ、型にはまった表現も多く、話題があちこちに飛びまくる日常会話よりも逆に楽かもしれません。
これはビジネス日本語でも同じ。
訪問時のあいさつや会議、電話など大体ビジネスで使う表現はパターン化できます。
ですから、会話のフローチャートなどを示してそのまま覚えてもらうのが普通の進め方です。
この番組のおすすめの勉強方法も同じで、番組で紹介された表現をそのまま覚えることです。
リスナーは実際のビジネスで英語を使っている人が多いでしょうから、自分の置かれている状況を踏まえて表現を増やしていくことになるでしょうね。
おすすめの人:仕事で英語を使う人
おすすめの勉強法:番組の表現をそのまま覚える
ニュースで学ぶ「現代英語」
NHKの国際放送で使われた比較的新しいニュースを素材にして、報道で使われている表現などを学んでいきます。
ラジオビジネス英語と並んで、一番難しいレベルになっています。
日々、日本語でテレビや新聞の報道に接していますが、英語ではどのように表現されているか日本に住んでいるとわかりません。
おまけにカタカナで表記・発音されるために、実際に使われている音とはかけ離れていることも多いです。
番組ではニュース英文を日本語で丁寧に解説してくれますので、対比して理解できます。
CNNなどをみていると英語の音だけでは何を意味しているかわからないことが多々ありますので、語彙を増やすには有効な番組でしょう。
テキストはありませんが、NHKの語学のサイトではニュースで使われた英文のスクリプトが確認できます。
おすすめの勉強法は、ここで使われた表現をそのまま覚えること。
解説もついているので、学習歴の浅い人でも理解しやすいと思います。
日本語教育でもニュースを使ったレッスンを行うことがありますが、日本語での説明の仕方を学ぶ方式が多いです。
改まった表現が多く、日常会話では使わないことが多いからです。
基本的にニュースは、一人が大勢に対してわかりやすく出来事を伝えるもの。
プレゼンと同じですね。
「ニュース」という番組名で時事英語をイメージするでしょうが、むしろ英語でのプレゼンなどでどのように表現するかを学んでいきましょう。
おすすめの人:ニュースで語彙を増やしたい人・英語でプレゼンを行う人
おすすめの勉強方法:ニュース英文で使われている表現を覚える
まとめ
NHKの語学番組は英語に限らず、本当にバラエティに富んでいます。
毎年同じことの繰り返しではなくて、毎年のように番組や放送内容をアップデートしてきます。
このことから外国語習得のための方法を、日々研究していることが見てとれます。
ですから、番組制作の意図の通りに学習を進めましょう。
必ず結果はついてくるはずです。
ほとんどの人は、科目として英語を勉強するのは高校まででしょう。
その時の学習方法で止まっているはずです。
番組のラインアップが一新される4月頃、番組テキストに一通り目を通してみましょう。
最新式の英語学習方法が書かれているはずです。
そして現在の中高生は、その学習方法で英語を勉強しています。
かつての常識だけでは、将来は通用しなくなります。
10年後に浦島太郎にならないためにも、NHKで最新の英語学習方法の知識を得ておくことは意義がありますよ。
無料相談受付中です
ただいま、無料相談受付中です。
うまく英語が話せないとお悩みのあなた。
外国人に日本語を教えてきた私が、外国語教育の観点からお手伝いします。
英語学習教材の良し悪しについてもお気軽にどうぞ。
白髪老師のサバ男でした。
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