こんにちは。
白髪老師のサバ男です。
外国人に日本語を教えています。
NHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」。
ヒロインの安子はNHKの英語講座を聞くだけで、進駐軍のアメリカ軍中尉と流暢な英語で会話をできるくらいの英語力を身につけていました。
物語は太平洋戦争前後の時代背景ですから、英語話者の外国人はまずいなかったはず。
ということは、安子は独学で英語を習得したことになります。
はたして、そんなことは可能だったのでしょうか?
また、現在はどうなのでしょうか?
ここでは、初心者が英語を独学で習得できるのかを考えていきます。
カムカム英語だけでは英会話力の向上は難しかったはず
「カムカムエヴリバディ」で安子がラジオで聞いていたのは平川唯一氏が講師を勤めていたNHKの「英語会話」という番組。
通称「カムカム英語」です。
カムカム英語は、昭和21年から26年にかけて放送され、爆発的な人気を博したそうです。
当時の人々は長く苦しい戦争の時代が終わり、新しい世の中を作ってくれるだろうアメリカに憧れていたと思います。
そのアメリカで話されている英語をラジオで勉強できるとなれば、大人気になったのもわかります。
ただ、私が生まれる前の放送なので、聞いたことはなく詳細な内容はわかりません。
「カムカムエヴリバディ」で流れた放送内容や、番組と並行して放送されたラジオ番組のテキストを見る限り、英文の解説が主な内容だった感じです。
当時の日本人は、英語を読むのも聞くのも初めての人が多かったでしょうからしょうがないのですが、これだけでは英語の知識は得られても、会話力の向上までは難しかったと思います。
というのも、英文の構造も知らない人がよりどころとするのは日本語訳のほう。
日本語で書かれた文章から、英文の内容を理解するはずだからです。
つまり、日本語で考える思考回路からは脱却できないことになります。
これでは、英語で意思は発することはできても、相手に伝わるかはわかりません。
音は英語であっても、中身は日本語なのですから。
例えば、「お疲れさまです」を「you are tired.」というようなもの。
カムカム英語だけでは、おそらく挨拶などの定型的な表現しか身につかなかったのではないでしょうか。
基礎英語を使いこなせば独学で日常会話レベルの習得は可能
日本人ならほとんどの人がきいたことがあるだろう「基礎英語」。
カムカム英語から70年たった令和の時代のラジオ講座はずいぶん変わりました。
私が聞いていた1970年代の基礎英語は、中学校の英語の授業の補講のようなもの。
文法中心で、正直あまり面白くありませんでした。
しかし、現在の基礎英語(中学生の基礎英語レベル1)は、会話中心。
「~について話すことができる」というCAN-DO年間計画表に基づいてカリキュラムが組まれています。
その会話に適切な表現として、使用する文法が説明されます。
例えば2021年11月では、
・身の回りで起こるできごとについて話すことができる
・自分や相手、家族や友だちについてたずねたり、答えたりできる
ための表現を学びます。
その時に使う、接続詞(because,when)、過去進行形という文法を学びます。
あくまでも状況設定がされている会話ありきで、文法はその手段という位置づけになっています。
1970年代のリスナーの私からみても、かなり進化しています。
これは1970年代からコミュニカティブ・アプローチというコミュニケーションを重視する新しい外国語教育法が考えられ、それに基づいて番組がつくられているからです。
コミュニカティブ・アプローチについては、別にまとめていますので、参考にしてください。
放送の内容は、その日のキーフレーズを含む会話文がまず流れます。
そのあとで、キーフレーズの意味の解説が続きます。
そのキーフレーズを使ったリピート練習、他の言葉に置き換える代入練習と続き、最後に簡単なロールプレイで終了。
これは日本語教育で外国人に日本語を教える流れである、導入・練習・定着の確認とまったく同じです。
放送時間こそ1日15分と短いですが、放送内容は外国語教育の王道ともいえるやり方です。
語彙の絶対数が少ないので、基礎英語の内容だけではむずかしいでしょうが、やりかた次第で十分自分の意思表示を英語でできるレベルまでにはいけると思います。
NHKの英語講座は、番組ごとにレベルが設定されています。
出典:NHKサービスセンター ダウンロードストア 英語講座のレベルについて
日常生活でのやりとりのレベル(CEFRのA1・A2)では「中学生の基礎英語 レベル1・2」に加え、「中高生の基礎英語 in English」が相当します。
これはNHKが勝手に決めたわけではなく、英米で作成されている英語教材のレベルをみてもほぼ同じです。
初心者が目指す日常の会話レベルなら、中学校で学んだ英語だけで十分とはよく聞きます。
つまり、この3つの番組のレッスン内容をマスターすれば、日常会話は大丈夫ということになります。
そして、これらの英語番組は独学で勉強することが前提なので、理論的にはひとりで日常レベルの英語を習得することは可能です。
独学で英文は作れても問題は発音
ただ、ラジオ番組だけでは日常会話の表現の知識が身についただけです。
実際に会話で使えるかは別問題。
たとえ、英語で考える習慣がついて英文の作成がスムーズにできたとしても、口からでた英語が相手に理解してもらえなければ意味がありません。
日本人が英語を話すにあたり、一番の障害になるのが発音でしょう。
なにしろ、母音の数からして違います。
日本語の5個にたいして、英語では12個とも26個とも言われますが、いずれにしろ日本
語よりは多いです。
日本語をおしえていてわかるのですが、日本語の発音に苦労する学習者は少数派です。
母音の少なさが影響していることは間違いないでしょう。
これだけは、うらやましいと思います。
他にもよく言われるLとRの区別が日本人ではつかないとか、日本語の高低アクセントに対して英語は強弱アクセントとか、なかなか英語のネイティブスピーカーのようには発音できないのが普通です。
自分では正しく発音したつもりでも、相手からは何言っているのかわからないという反応が返ってくるのはよくある話。
最近ではITツールの性能もあがって、発音を比較的正確に認識できるようになりました。
ただ、こういったツールでは正誤判定はできても、間違えた箇所をどうすればただしく発音できるかまではおしえてくれません。
英文を聞いてリピートして録音して、を繰り返せばできないことはないでしょうが、あまり効率はよくないと思います。
ここは英語ネイティブスピーカーと会話をして指摘してもらうのがいいでしょう。
特に英語を教えるプロである、英会話の講師に直してもらうのが一番早道だと思います。
逆に言えば、発音のミスを的確に修正してくれるような教材ができれば、日常会話レベルはほぼ独学で習得可能となるでしょう。
まとめ
中学校で学ぶレベルで日常会話はマスターできるのですから、日本人のほとんどは日常会話レベルの英語表現の導入は済んでいることになります。
あとは自分が努力して練習を行うことです。
これはいろんな教材を使えば十分に効果をあげることができます。
ここまでは独学でも大丈夫でしょう。
あとは発音のブラッシュアップです。
現時点ではネイティブスピーカーに指摘してもらうのが一番です。
ただ、発音にフォーカスした教材も出てきています。
将来の技術の進歩次第では、発音も独学でマスターできる時代がくるかもしれませんね。
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