こんにちは。
白髪老師のサバ男です。
外国人に日本語を教えています。
多くの人にとって、人生の一大イベントになるのが高校・大学の受験。
英語は受験科目に必ずありますから、勉強しないわけにはいきません。
なので、ほとんどの人が基礎的な英語は身につけているはずです。
それでも英語が苦手な日本人。
受験英語は英会話の役に立たないと、妙に自虐的になっているひともいますが、本当にそうでしょうか。
せっかく10代の貴重な時間を使って勉強した英語。
それがまったく役に立たないというのは悲しすぎます。
ここでは受験英語が本当に英会話の役にたたないのか、役にたつとしたらどうやって生かせるかを考えていきます。
公立高校の試験問題はロールプレイの題材に最適
東大に何人も入学する日本中に名の知られた進学校を希望するような人は別にして、多くの中学生は公立高校の受験を考えるはずです。
公立高校の試験問題が、高校受験英語の一つの目安になると思います。
都立高校の試験問題は公表されているのでみてみると、出題の方針がかかれています。
出典:令和3年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表
令和3年度の試験での狙いは大きく分けて二つ。
・初歩的な英語を聞いたり読んだりして、話し手や書き手の意向などを理解する。
・自分の考えなどを表現するコミュニケーション能力をみる。
高校受験は、中学時代の学習の習得度合を確認するもの。
この狙いからは、中学校の英語ではコミュニケーション能力の向上を目指していることになります。
実際の試験問題を見ると、ざっと以下のような内容(リスニング除く)。
- 留学生との会話で、空欄の穴埋め
- Eメールでかかれた文章の大意把握
- Eメールでの返信に書く英文作成
- 英語での会話文で、発言者が表現した内容の理解
- 長文の文章の大意把握
3つの大問に分かれていますが、そのすべてに会話文が含まれています。
その会話文、中学英語の文法の範囲からは外れていないはずですが、割と細かい感情表現もみられます。
これだけ話すことができれば、初心者は卒業レベルと言えそうです。
つまり、高校入試の会話文が目指すべきひとつのマイルストーンになります。
こんないい題材を放っておく手はありません。
無料(税金で作られていますが)のものは有効活用しましょう。
私がおすすめするのは、すべての会話の英文を一字一句ではない日本語にして、それを発言者の気持ちになって英文に変えてみること。
ちょっとしたロールプレイです。
例えば、
リョータ「日本の昔のオモチャでどんなのをつくりたい?」
ジェームス「アメリカの弟と遊べるやつかな」
とかの文をつくって、英文にしてみるのです。
試験問題の会話文はそれほどむずかしくありませんから、何回かやれば覚えてしまうくらいになると思います。
日本語の文ではなく、その状況を思いうかべて英文にするのがコツです。
そうすれば状況と英語表現がリンクしますので、英語が口からでやすくなるはずです。
同じように他の道府県の問題もやってみると面白いですよ。
共通テストの問題は語彙力の判断基準にできます
大学受験は高校受験とはちょっと違います。
それぞれ専門分野を学ぶための機関が大学ですから、高校の授業の集大成には必ずしもなりません。
英語の論文を読んだり、場合によっては書く必要もでてきますから、その大学にふさわしいだけの英語力が求められます。
また、学部別に要求される内容も違います。
論理的な文章を要求される理系の学部と、作者や登場人物の心境を研究する文学部とで同じ問題がでるはずがありません。
したがって、基本的には志望大学・学部ごとの受験対策が必要になるわけですが、大学入試には足切り試験に相当する大学入学共通テスト(以下、共通テスト)があります。
共通テストの目的は大学入試センターのサイトで公開されています。
試験問題の作成については、コミュニケーション重視をうたった高等学校学習指導要領のうち、「読むこと」「聞くこと」の能力を判定するとの方針。
「話すこと」「書くこと」については2次試験でやってね、との割り切りがうかがえます。
第1回の共通テストが行われた令和3年のリーディングはどんな問題だったかというと、こんな内容。
- ルームメイトとのスマホでのメッセージやりとり
- 好きなミュージシャンのWebでのチケット購入方法
- 学園祭のバンド大会の採点について
- 学校の校則についてのオンライン掲示板でのやりとり
- 旅行サイトに掲載されていたQAの内容
- 校内新聞の記事について
- 教師と生徒のメールでのやりとり
- プレゼン作成
- アイスホッケーの安全についてのポスター作成
- 説明文の読解
題材は高校生から大学生が体験するだろう日常の出来事から作られていて、受験生がイメージしやすい試験問題。
リーディングの問題とあって、問題文の内容の理解度を問う内容です。
マークシート方式なのでしょうがないのですが、受験生のアウトプットを行うところはありません。
結局、大学の入学試験は2次試験まで含めても「読む」「聞く」「書く」の3技能の試験ということになり、「話す」能力の確認はできないままとなります。
英語の試験に民間の資格試験を活用しようという動きがありましたが、このあたりをなんとかしたいと考えたのでしょう。
以上から、共通テストの英語でいい点を取れたからと言って、必ずしもうまく話せるわけではないということになります。
かといって、共通テストが使えないと判断するのは早計。
共通テストの英語のレベルはCEFRでいうとA1~B1のレベルであると公表されています。
B1であれば初級後半から中級前半のレベル。
これだけの語彙数を理解していれば、日常会話で困ることはないはずです。
ここから共通テストの問題を辞書なしで理解できれば、日常会話の語彙力は十分ということになります。
単語の意味がわかっていないと会話になりません。
語彙力がどのくらいついたかの確認には、共通テストの試験問題は有用だと思います。
試験会場の受験生と違って、時間制限はありません。
じっくり読んでどのくらい理解できるか、わからない語彙がどのくらいあるのか、英語学習のいい道標になると思います。
受験英語は英会話に役に立ちます
多くの人にとって、受験勉強はやはり苦痛に感じるもの。
人生をかけた勝負なのですから当然ですが、それだけに出題するほうも責任重大です。
問題を作成する側での視点でみると、定められた出題範囲の中で受験生の成績に差をつけるような問題を作らなければなりません。
易しすぎてみんな満点をとったり、難しすぎて平均点が極端に低くなるような問題は作れないのです。
つまりよく勉強している人はいい点がとれて、あまり勉強していない人はそれなりの点しかとれないという、努力がそのまま結果に反映されるべく作られているのが入試問題です。
そんな入試問題で使われた英語の内容が使えないということは考えられません。
特に受験する人数の多い公立高校や大学入学共通テストの問題は、練りに練られた内容であることは容易に想像できます。
現在の中学高校の英語教育はコミュニケーション能力の育成を重視。
入試問題もまたコミュニケーション能力を測るものになっています。
受験勉強はどうしても点をとるための勉強になりますが、受験生の立場を離れて入試問題を見てみると、実際のコミュニケーションで使う表現が多くあることがわかります。
高校入試では会話文が、共通テストでは語彙や表現が大いに参考になるでしょう。
そして、その試験に備えて勉強したことが無駄になることはありません。
決して受験英語が役に立たないということはないのです。
まとめ
高校にしろ、大学にしろ、入試問題は受験生の選抜を目的にしています。
万一試験問題に誤りがあると、受験生の人生に大きな影響を与えてしまいます。
それだけに、問題作成にあたっては入念なチェックが行われているはずで、英語の表現で不自然な内容はまず考えなくてもいいと思います。
おそらく数人のチェックしかうけていない市販の書籍の英文よりは信頼度は高いでしょう。
受験勉強自体は点取りゲームですから、受験ノウハウなどの攻略法が必要。
学校英語の目的であるコミュニケーション能力とは違うテクニックが要求されるので、そこから受験英語の否定的なイメージがでてきます。
ですが、試験で出題される内容自体はとても良質な物。
試験問題の解説なども多く出ていますので理解するのに困ることはないでしょう。
英語学習の教材の一つとして使うにはとても有用なものだと思います。
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